3.FRPの注意点
  *FRPは樹脂とガラス繊維が最適な状態で組合った時に本来の強度が出るものである。自作ではハンドレイアップにより積
       層されます、ソリッド素材の強度はほぼ同一ですが、FRPは作業者の技量により異なってきます、マニュアルブックを頭に
       入れ忠実に作業することで高品質のFRPが出来るでしょう。
1.木構造用FRPの特徴
  木構造用にFRPを併用する事により、いろいろなメリットがあります。
  *木部材の接合部を接着、積層するので完全防水が可能となり、従来工法の接合部から水が侵入し部材の腐りが無くなり、
       ボートの寿命が大幅にのびる。
  *シームレス構造に近い為ボートの応力が分散され撓りのある、高強度のボートの製造が可能である。
  *フレームレス構造に近いため、部材点数が減り、短期間で完成することができると共に艇体重量も他の素材と比較すると軽
       くできる。
  *隙間は充填剤で接着する為、ステム、キール材の作成、各部材の精度の高い合せ、ベベル取りなどの高度な造船技術が
      無くともボートの製作ができる。
*FRPはグラスファイバーで強化されたプラスチックである、と言ってもよく解らないが、鉄筋コンクリートと同じ考え方である。コン
   クリートそのものはもろく、又鉄筋自体の強度はあるが鋼性がありません、しかし双方の特徴を生かし巨大な建物も成り立って
   います、FRPの場合、樹脂がコンクリートでファイバーグラスが鉄筋の役目をしています。
*昔はFRPライニングと呼ばれ木造艇の防水加工用としてガラスクロスとポリエステル樹脂を使い、木材の表面をコーテングして
   いました。そしてモス、コンテンダー、ファイアーボールなどの軽量合板デンギーの自作セーラーの出現と共に、米国からのエポ
   キシ樹脂を使った工法が紹介され、構造部材としてFRPが使われました。カヌー、カャック製作では今も使われていますが、日
   本ではマリン合板、ボート用エポキシ樹脂の入手が困難さもあってボートの自作は残念ながら殆ど普及しいません。
*木材は他の素材と比較すると鋼性、疲労、軽量など優れた特性がある、一方、基本強度が劣る、天然である為均一性がないな
   ど問題点もあります、FRPとのマッチングはよく、互いの短所を補う様な使い方でコンポジット素材として、新しい造船材料として
   見直される事を期待します。
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2.コンポジット素材としての用途
  木構造用FRPには2つの用途があります。ひとつは木材(合板)の接合部の強度を補強する役目です、接合部、即ちコーナー
    部にはボート航走時に外力により応力が集中する箇所です、接着、フィレッテングは接合力はありますがその耐久性には不安
    が残ります、グラステーピングする事によりその連続性のあるグラス繊維が荷重を分散し、接合部のクラッキングなどの、トラブ
    ル防ぐと共に部分補強がなされます。そしてもうひとつは、木材の両面にFRPの層を造り木材を芯材とした鋼性の高いサンド
    イッチパネルを形成することが出来ます、ストリッププランキングのカヌー、ボートの船底外板などに応用されています。双方と
    も従来の木構造と比べ軽量化が可能で、小型ボートではFRP構造艇と比べると約 3割艇体重量を軽くすることができます。
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*サンドイッチ構造はなぜ強いんだろう?
 右図のような同一重量で形状の異なった板があります。曲げ強度
  の係数は断面係数(Z)であらわし、形状が異なればその数値も違
  います。曲げ強度は単板を 1 とするとサンドイッチ板は 9 となりま
  す、又板のたわみを比較すると 1/37 と小さくなり、FRPの短所
  でもある撓み易さを改善し、曲げに強い鋼性パネルが出来ます。
 建物に使われているH型鋼も同じ理由です。